アジアのウーバー
配車アプリ、ウーバーの新社長は、この地域でライドシェアビジネスを手放すつもりは全くないと述べました。彼の戦略に関する詳細なコメントは競合との厳しい戦いと、輝きを失った世界ブランドについてでした。
アジア太平洋事業の新しいビジネスチーフオフィサーのLブルックス・エントウィッスル氏は事業の評判はアメリカでのセクハラ騒動で埋め尽くされてしまったと発表しました。けれども、これらの問題を解決し、アジア市場を積極的に成長させるつもりだと付け加えました。
ウーバーはアジアでのマーケットシェア維持に苦労しており、年間推定数十億の損失を出し、昨年中国の事業をライバルであるディディ・チューシンに売却せざるをえませんでした。その当時も書いたように、ウーバーのチャイナドリームは、CEO兼創始者であるトラヴィス・カラニック氏のに大恥をかかせるで締めくくられたのです。彼は、かつて中国での成功は世界一になることを意味すると述べてその名を知られました。
「出口戦略」はない
ウーバーがもっと広い地域で同じ窮地にさらされるかもしれないという懸念はありましたが、エントウィッスル氏は日本で同様のことが起こることはないと断言しました。
「ここ[アジア]は、世界の大きな部分を占めている。乗車数の20%をアジアが占めていて、ドライバーの割合も非常に大きく、我々にとってこの地域全体が成長市場なのです。」 彼はウーバー、シンガポールオフィスで話し、次のように続けます。
「我々はそれに貢献するためにできることをしなくてはなりません。つまり、アジアには出口戦略と言うものはないのです。」
アジアのライドシェア産業の現在のシナリオを掲げ、彼の言葉は挑戦的に聞こえます 。この地域での地元のライバルはウーバーと張り合っています。東南アジアでは、マレーシアの大物アンソニー・タンが運営する地元企業のグラブタクシーは市場シェアを獲得し、特に貴重なシンガポールを含むアジアの主要7都市に参入しています。また、日本のソフトバンクや中国のディディ・チューシンから数十億の投資を受けています。
インドでは、ウーバーは同じくディディ・チューシンの後ろ盾を持つオラキャブとの競争を交わす必要に迫られています。
規制が確立されておらず、アメリカでのセクハラ・ミスマネジメント訴訟に加え、ウーバーがこの地域でのファースト・ムーバーズ・アドバンテージを失ったのは明白です。
しかし、エントウィッスル氏はそれすらも全て良しとすると言うのです。
同氏は「取引できる国が無くなるとは思っていません。逆にこの地域で取引できる国やマーケットシェアを増やすことを念頭に置いています」と話します。
ただ現実はアジアのライバル達は差を縮めてきています。ウーバーがヤンゴンでのサービスのオファーをする一方で、今年の初めグラブキャブはミャンマー市場に参入ています。専門家の多くは、この地域では地元の企業の方が市場をよく理解しているため有利だとしています。エントウィッスル氏は即座にウーバーが世界に広く進出していることを強調し、同社のネームバリューについて指摘しました。
「我が社は6大陸77カ国にある600の都市にまたがるグローバル企業です。現地の市場にグローバルなアプローチをするのです」と、同氏は自信をにじませて話します。
改善すべき問題
テック系企業の要職について元ゴールドマンサックスの銀行員がその職に就いていたのはわずか2ヶ月の間でした。彼はカンボジアがウーバーアジア事業部の次のターゲット市場で、既存市場の深くまで入り込むことがこの地域で成功するための戦略だと話します。
けれども、ウーバーの成功に必要なのは競争に勝つことだけではありません。最近のセクハラ騒動、社内機密の窃盗に関する訴訟、執行部の混乱はグローバルブランドの名に大きな傷をつけ、事業の成長を疎かにし、社風の改善に奔走することとなりました。
エントウィッスル氏は改善すべき問題があることには気付いていると言います。
「ウーバーは起業から信じられない速さで成長し、成長のプロセスや社内文化がその成長に追いついていなかったのです。ここにきてようやく全員がウーバーの一員として[社風]を重んじるようになってきています。」と、同氏は述べ、「我が社はまだ完璧ではないけれど、そうなれるように一生懸命努力しています」と付け加えました。
エントウィッスル氏の仕事は難しいものです。アジアのライドシェアビジネスの市場はどんどん競争が激しくなっており、ウーバーはもはやこの地域で唯一ではないのです。エヴェレスト登頂に2度成功した登山家と3人の娘の父親は困難というものをよく知っています。またエントウィッスル氏は自分のブログで、これまでの問題への新しいアプローチを模索することは自分の職務であると述べています。自身の言葉を胸に、うまくやっていくでしょう。